また来てな

僕の母校の小学校を通り過ぎたところに、当時はゲームショップがありました。
マンションの1階で、2フロアくらいの広さの小さいゲームショップでした。
確か僕が小学校3年生くらいの時に出来たと思うのですが、
当時の友達が「すごい、学校の近所にゲームショップ出来てる!」と
はしゃいでいました。
僕も胸を熱くしたのを覚えております。

そのうちの誰かが意を決して中に入ってみたようで
兄ちゃんが2人でやっている、そんなゲームショップだったとのことでした。
最新のゲームがデモ機として置いてあって
兄ちゃんたちとそのゲームで遊べたと言うのだから
僕らはこぞって遊びに行きました。

それ以来、そのゲームショップはすっかり僕らの溜まり場となりました。
放課後、ウキウキしながら立ち寄ったものです。

ゲームはだいたい対戦型のものが置かれており、
兄ちゃんと戦っては遊んでいました。

ある日、その対戦のものでどうしても兄ちゃんに勝てないゲームがありました。
何度も挑みましたが、何度も負けました。
兄ちゃんも勝つたびに「甘いな」的な少し挑発的な態度なので
悔しくて僕は泣き出してしまったのです。
兄ちゃんは少し焦りながら「挑戦してくるからやん。。。」と言っていましたが
そんな兄ちゃんを尻目に僕は店から飛び出したのでした。

それからは子供ながらに、なんとなく気まずくなり
そのゲームショップに行くことはなくなりました。
周りの友達たちも、旬が過ぎてしまったのか、
だんだんとあまり立ち寄らなくなって行ったように思います。

それから、何年かして、ものすごく欲しいゲームが出て来たのですが
どこに行ってもなくて、もしかしたらあのゲームショップなら
あるかもしれない、と思って立ち寄ったのでした。

何年かぶりに店の扉を開けると、そこには兄ちゃんがいました。

「おお、タクマやん。久しぶりやな。」

よく行っていた時期と変わらない感じで僕に、そう言いました。

「どうしたん?」

「いや、欲しいゲームがあるんやけど、どこに行っても見つからなくて」

「なんてゲーム?」

僕はゲームの名前を言いました。

「えらい古いゲームやな。その棚に無かったら無いわ」

僕は棚をグルっと見てみましたが、そのゲームを見つけることは出来ませんでした。

「無いわ。。。また別の店行ってみるわ」

「そうか」

僕は店を後にしようと扉に手をかけたのですが、その僕に一言

「また来てな」

と兄ちゃんは言いました。

それから、小学校を卒業して、もうそのゲームショップに行くことも無く、
気がつけばその場所は「テナント募集」となっておりました。

それから何度も何かの店が入っては「テナント募集」になり、
それを繰り返して今はもうマンションの1室になっているようです。

僕ももう、おそらく当時の兄ちゃんたちの年齢を遥かに上回ってしまったと
思うのですが、そのゲームショップの跡地を通り過ぎるたびに
当時のことを思い出して、胸がチクリと痛むのです。

兄ちゃん、あの時泣いちゃってごめんな。と。

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