また明日を待ってる

さて。

なんでだろう。

不意に昔に友人としていた会話を

思い出したんです。

春も通り過ぎて

初夏の空が連れてきたのでしょうか。

詩人みたいなこと言って

すみませんね。

僕、こう見えて

詩人なんです。

吟遊詩人ですね。

なんそれ。

どうもすみません。

うちのコイツが。

それはそれとして

その会話は

「アワビかマツタケか、どっちがえらいか」

と言う会話でした。

議論は白熱し

私はアワビをちゃんと食べたことがなかったのですが

マツタケはあったのです。

マツタケが美味しいことは知っています。

美味しいは正義です。

私はどっちがえらいかで言うと

美味しいマツタケがえらいに決まっている。

そう言ったのでした。

しかし友人がその理屈はおかしい。

と言いました。

友人はアワビの方がえらい派の畑だったのです。

彼はアワビえらい畑を耕して

早十数年。

今ではすっかりアワビえらい畑の住人です。

友人の理屈はこうでした。

「アワビは動くからね」

そうです。

その瞬間、私の体に電流のようなものが走りました。

5アンペアはあったかもしれないです。

もしかすると6アンペアかも。

それは「気付き」でした。

私はぐうの音も出せずに

こう言ったのです。

「ぐぅーー!」

でとるやないかい。

ぐうの音、でとるやないかい。

ほんまそれです。

マツタケは植物だから

動きません。

しかしアワビは動きます。

だからもしかすると

二千年後か

二千億年後か

アワビが政権を取ることだって

あるかもしれないんです。

アワビさんならやってくれる。

だって動くからね。

動き続けて二千億年。

やがてやってくるアワビ政権です。

アワビ朝廷かもしれません。

だから思ったんです。

僕も動こうって。

動いている限り僕にだって

政権を握れる可能性はゼロじゃあないはずです。

タクマ政権の勃発です。

もしかしたら

タクマ朝廷かもしれないです。

政権と朝廷の違い。

そんなのは知らないです。

歴史の教科書でも見てください。

僕に聞かれたって困ります。

さて。

アワビだの

マツタケだの

そんな話をしていたら

腹が減ってきましたね。

冷蔵庫を開けてみたら

そこには

アワビも

マツタケも

いませんでした。
いませんでした。
いませんでした。
いませんでした。

僕は何を思えばいいんだろう。

僕はなんて言えばいいんだろう。

こんな夜は会いたくて

会いたくて

会いたくて

君に会いたくて

君に会いたくて

また明日を待ってる。

以上。

また明日を待ってるでした。

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